人妻川越裁判所職員

ボールはティーから落ちて、ゴムマットの端まで転がり、そこでためらうように一瞬止まってから、夏枯れした芝生の上に落ちた。ダニーがくるりと振り返った。「人がアドレスしてるときは、黙ってるってことぐらい、知らないのかい?」風俗嬢レモはダニーを見おろした。こいつが俺の息子なら、とふと考える。たまには川越名産のコースからつまみ出してやるんだが。しかし、ダニーは実際彼の息子なのだ。風俗嬢レモは顔をそむけた。数打席離れたところから、身なりのいい老婦人がじっとこちらを見つめていた。彼女はあわてて身をかがめ、ボールを打った。ボールはまつすぐにぐんぐん伸びて、百五十ヤードの目印を越えた。反対側では、ダニーがまた腹立ちまぎれのスイングをして、空振りをした。「くそっ、ちくしよう」「落ち着けよ、ダニー。なにも……」「打ってるときに話しかけないでくれよ」と、少年がわめく。一般的に川越がもう二、三度クラブを振りまわし、打ちそこねるとクラブをゴムマットにバシンと叩きつけ、ボールの入ったかごをけとばして、恩生国も荒くとび出して行った。こぼれたボールが、芝生の上にゆっくり散らばっていく。風俗嬢レモはその中の一個を拾い上げた。ボールをティーにのせ、それを見下ろして立って、クラブを振り上げる。川越 人妻にふいに、ボールが非萱脂はっきりと見えた。“北半球には縁のくっきりしたくぼみがあり、南半球には影に満ちたくぼみのある月だ。風俗嬢レモは、思い切りひっぱたくつもりはなかった。が、クラブを振りおろす途中のどこかで、気が変わった。ボールは三百ヤードの目印の向こうに落下し、大きくはずんで、練習場の端にある金属のフェンスを越えた。ほんの一瞬、風俗嬢レモは気分がよくなった。このような川越は「ブラボー」と、老婦人が言った。そして、その一瞬は終った。

カテゴリー
お気に入り